曇り
1986年、初めての一人旅でヨーロッパに出かけた時、フ ランスで子供たちに襲われた。最初はパリのコンコルド広 場で。ロンドンからの夜行列車を降りて、地下鉄の駅を出 たところでやられた。ニースでは、バーガーキングでハン バーガーを食べて出たところを襲われた。彼らの狙いはウ エストバッグ。それ以来、ウエストバッグはしないことに した。突き飛ばしたり荷物を振り回したりして、難は逃れ たのだが、何だか嫌な感じだった。宿のおばさんとかツー リストインフォメーションの姉さんは「ジプシーの子たち だわね」と口を揃えた。だから、ジプシーと呼ばれる人た ちにはあまり良いイメージはなかった。 そのイメージがガラリと変わったのは、2000年5月の日 比谷野外音楽堂でのことだった。アイルランドのアルタン というバンドのイベントに登場したルーマニアの田舎からやってきたジプシー楽団、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス。 70代のオジィも数人メンバーに加わった13人編成のファン キーなバンド。もちろん言葉はわからないが、彼らのファ ンキーなグルーヴは会場を熱狂させた。13人のジプシーた ち。当然、舞台の上に秩序みたいなものはあんまりなくて、 演奏の途中で勝手に中座したり、理由のない出入りが多か ったり…。ショーとしてはちっとも完成されていないのだ が、彼らの村の宴会にでも紛れ込んだような不思議に高揚 した気分に包まれたのだ。彼らのステージが終わった時、 フランスでの出来事は、チャラにすることにした。彼らに はまったく関係のないことなのだが。 今年のはじめ、映画「風音」の話を聞いた時に最初にビ ビッときたのは、音楽「タラフドゥハイドゥークス+平安 隆」。ベタな沖縄音楽とは違って、不思議なジプシーの音 色は、映画に違った彩りを与えていた。不思議な香りのす る映画だったので、何だか得体の知れない感じがするタラ フの音楽はバッチリ決まっていた。 この不思議な縁に、ルーマニアのジプシー楽団を沖縄に 連れてこれたらいいなぁとボンヤリと考えた。実現するか どうかはわからないのだが、会場は仮押さえされている。 本当に実現できるといいのだけど。春の夢に終わりません ように。
|
|